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Fuji Sankei Business i on the Web 知 的 財 産 サ ロ ン:『フジサンケイ ビジネスアイ』オピニオン面「知的財産サロン」毎週金曜日掲載

2004/4/2紙面掲載
あなたもなれる? 発明長者[5] 特許評価の考え方
割引率を用い現在価値をみる
算出には割りきりが必要
「知財ビジネス&ビジネスシステム」中岡浩

■インカムアプローチの代表はDCF法■

 研究者が当該発明からどれだけの発明対価を得られるかを考えるためには、その特許自体にどれほどの価値があるのかを評価する方法を知っておく必要がある。なぜならば、例えばその特許を企業へ移転する際に、その特許の価値を知っているのと知らないのとでは、取引の内容に関して研究者の納得の仕方は大きく違ってくるからだ。そこで今回は、特許を評価するための基本的な考え方を簡単に理解しておこう。
前回、「通常、特許の財産的価値は、当該特許を利用できる期間中に、当該特許を使った商品を販売して得られるであろう売り上げと当該特許を他社等に移転したり利用させたりして得られる売り上げの総和となる」とした。発明から得られる収益にはライセンス収益や商品利益等があり、これらの権利期間中の総和が特許の財産価値となる。研究者はこの財産価値の何%かを発明の貢献度合いに応じて発明の対価として得る権利を持っているわけである(図1)。
このような収入を主体にした考え方をインカムアプローチ(収益還元法)と言うが、特許の評価を行う場合にもインカムアプローチは最も基本的な考え方となっている。
 インカムアプローチによる特許評価の代表的な手法にDCF法(Discounted Cash Flow ディスカウント・キャッシュフロー法)がある。キャッシュフローとは、税引後利益に減価償却費を足して、配当と役員賞与を差し引いた金額のことである。DCF法を使う場合、一般的には当該特許を排他的に利用して製品を開発した場合に得られるキャッシュフローを使うとされる。つまり一社独占での場合を想定している。

■財産価値は時とともに逓減していく■

また図2のように、得られたキャッシュフローのうちで当該特許が貢献した割合部分が、当該特許のインカム(当該特許による超過収益)となる。貢献度合いであん分するのは、キャッシュフローをあげるためには、特許以外の様々な要素が貢献しているためである。
このインカムを特許活用期間中、将来にわたって加算して行ったものの総和が特許の財産価値となるが、特許評価の場合はこの期間中のある時点でどのくらいの財産価値が残っているかを表す考え方である。つまり、二年目より三年目、三年目より四年目と財産価値は逓減していくわけである。どの時点で答えを出すかによって、特許の評価は変わってくるわけだ。
 普通、将来のインカムの価値は現在の同じ金額より低いものになる。例えば物価が上昇すれば、現在百円で買える物は将来百二十円になるかもしれない。このためDCF法では将来のインカムに一定の割引率を掛けて、現在価値に修正する方法を使う。
例えば一年目が二百万円のインカムで二年目のインカムが二百二十万円の場合、割引率を10%としたならば、二年目のインカムの割引現在価値は二百二十万円÷(1+0.1)=二百万円となる。このように、将来のインカムを現在価値に置き直して割り出す方法がDCFなのである。
 DCF法での評価を行うには、商品の売り上げ、必要経費のデータを将来に渡って用意しなくてはいけない。将来部分は想定データとなる。また、現在価値に引き直す際の割引率をどのように設定するか、キャッシュフローに対する特許の貢献度を何%にするかも決めなくてはいけない。

■算定は大ざっぱに、割りきる■

こうなってくると、一見非常に難しいようだが、前回にも述べたように、知財に関する算定はおおざっぱにしかできないものと割り切って、数値を入れてやってみることである。
 DCF法では評価を精密化するために、新たな特許の出現や経営上の問題から発生する様々なリスクを織り込んだ手法も使われている。またDCF法の延長線上に高度な金融工学的手法も使われるようになっている。
 インカムアプローチの方法としてもう一つ代表的なものに、25%ルールという評価法がある。これは欧米で用いられている実施料率の簡便な適用方法で、実施料率を当該特許から得られる税引き前利益の25%と一律に規定するやり方である。
日本においては、さらに単純な方法として、売上高に5%をかけるやり方も使われている。
分かりやすい特許評価法のひとつにコストアプローチ(原価法)がある(図2)。特許の開発から管理に至るまで発明にからむあらゆるコストを足していく手法である。これは、企業にとっては投資の回収原価となる。必要なデータとしては、人件費、研究開発費、特許取得・管理費など。
計算上のポイントは、複数の研究開発のために使用されている人や設備などのコストを特許ごとにどのように配賦していくかにある。ここでも割りきりが必要になる。
 コストアプローチの欠点は、特許を生み出すための原価は計算できても、特許の将来にわたる財産価値が見通せない点にある。当該特許が一千億円の収益を生んでも、一億円しか生まなくても、コストアプローチでは固定的で同じ特許評価しか算出されない。

■コストアプローチは企業に有利な場合も■

多くのコストを費やしたからといって多大な収益をもたらす特許が生まれるとは限らないし、逆に最小コストで巨万の利益をもたらす特許が生まれるかもしれない。後者ならば、コストアプローチは企業にとっては有利な評価手法である。
 特許評価の代表的な手法として、三番目にマーケットアプローチ(類似取引事例比較法)がある。従来、一般に不動産の鑑定評価などで用いられてきた手法で、すでに存在する市場で類似の取引を探してそれと比較して評価を決めるやり方である。
実際の取引事例を参考にするので納得感が出る半面、類似取引がないと判定のしようがないという欠点もある。特に日本の特許取引においては非公開の場合が多く、類似取引を個別に探すことは難しい。
このため実際には、公開されているデータから企業の全体的な特許価値を評価する方法に使われる。例えば、上場企業の類似業種の類似企業をピックアップし、貸借対照表から無形資産の額を推計し、この中からさらに特許資産を割り出して、企業収益力との相関関係を見て評価していくという考え方である。
 以上、特許評価の方法について概観してきたが、これらはいずれも特許の財産価値、すなわち経済的評価にあえて着目したものである。特許の評価においてはこのほかに、技術的評価や権利面からの評価も重要な視点である。当該特許技術の革新性、影響度や完成度がどれほどあるのか、または権利化の範囲や権利行使時の安全性など、特許評価には様々な視点が要求される。特許はこれらを総合して評価されるものである。
(ミニ用語解説)

◇特許の評価◇
特許評価は、特許の許諾、移転売買や資金調達など企業の対外取引における客観的な基準を作る際に重要であり、標準的な評価手法の確立は特許ビジネスおよび関連市場の環境整備には欠かせない要件となっている。企業経営においても将来の収益予測や戦略策定を決める上でも重要で、知的資産重視の経営をする企業においては必要不可欠な要素となっている。また中小企業やベンチャー企業など資産基盤が脆弱な企業では、保有する特許の潜在力を測ることで、融資や投資を呼び込むことができる。


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